第16話 生徒会執行部の

 エルナは生徒会執行部の部屋へと来ていた。
 そこには、生徒会長である『レイン・メルウェス』と、副会長である『ケイ・オルティア』が一緒にいた。
 今の時間は授業開始の時間なのだが、緊急招集として二人には特別に来てもらっていた。

「なにかあったようですね、エルナさん。とりあえず座ってください」

 こちらへどうぞ、と言わんばかりに椅子をさげ座らせるように促すレイン。
 エルナが席につくと、レインも自席へ向かった。

「では……」

 エルナはレミィたちから聞いた事をそのまま話した。
 ケイが入れてくれた優雅な紅茶をすすり、一息をいれるエルナ。
 やはり、さすが生徒会というべきか、すでに昨日起きた事件のことは彼女たちは把握していた。なので、伝えたのは主にレミィたちから聞いたことだ。

「なるほど。彼女たちを襲ったのがうちの上級生である可能性もあると」
「行方不明事件の関連もあるのかもしれないと思うが、どう思う?」

 両肘を机に付き、その両手を口の前で組む格好で問いかけるエルナ。
 また同じ格好で話しをしていたレインが、目を閉じ何かを考えているように時間を流す。
 少しして、ゆっくりと目の前の紅茶に手をやるレイン。
 全くもって絵になるその仕草は美しい。
 静かにカップを置く。そして

「……ええ。そうですね。エルナさんの仰る通りだと思います」

 間を置く。

「その事件には私達の学園の者も、学園にいた者も関わっているのでしょう。手引者として。そしてそれだけじゃなく」

 エルナの顔が少し険しくなる。
 こいつ、すでに何か知っているのか……。
 目がそう語っていた。

「リアンさん、ですね。あのシルフィードと言われている。その力であって苦戦を強いられていたわけですね。それから、レナールさん。彼女もそれなりの力はあるはずですが、まぁ、やんちゃがすぎる子ですからね」

 うふふっと上品な笑い声を漏らすレイン。

「生徒たちは大丈夫か? レミィたちが襲われたんだ。それなりの力があるのかもしれない。他にも被害者がでないとも限らない。私も警備にはでる。だが、それでは間に合わない」

 立ち上がり、少々強くなるエルナ。
 しかしレインはその姿を見ることもなく、落ち着きも崩さず続ける。

「ええ、わかってますよ。私たちはもう準備はできてますから、そう焦らなくてもいいですよ」

 視線を落としながら話していたレイン。
 その視線をエルナに向ける。

「こちらに任せてください。生徒たちのことは私たちが。そして、彼女たちには、そう……生徒会(うち)の優秀な子を付けておきますよ。恐らく……」
 
 レインとケイがちらりとお互いを見合い、ケイがコクリと頷いた。
 先にケイが席を立った。

「エルナさんも、アレストルへの連絡お願いしますね。流石に私達だけでは園の外のことまでは手がまわらないと思いますので」
「ああ、わかっている。……頼むな」

 席を立ち振り返るエルナはそのまま部屋を出ていった。
 エルナの去った部屋で、レインはゆっくりと紅茶に口をつけていた。

「……エクセス・マスティカ。懲りずにまだ」

 ぼそっとレインがつぶやいた。誰もいないその場所で誰にも聞こえない声で。
 



 授業が終わり放課後。レミィは保健室にいた。
 昨日受けた怪我の治療に訪れていた。
 殆どは、ティナのマスティカのおかげで傷がふさがっていたが、痛みは残っている。我慢できない痛みまではいかないけれど、痛み止めを貼ってもらっていたから、その交換というわけだ。
 
「もう、だいぶ痛くなくなったかしら?」

 痛み止めを貼り替えてくれているのはいわゆる保健の先生であるシェリル・ルース。
 黒いロングストレートヘアにぱっちりした目が可愛さを写す。童顔、とも見える。背丈はレミィより少し高い。着ている白衣のおかげでそれなりに見えるが、なければ先生には見えないだろうなぁ。ただなぜかこの人も胸だけは大きくて……。
 下着姿のレミィ。その腕や肩、腹部には痛々しいあざが残っていた。それでもだいぶ薄くはなっていた。

「はい、朝よりも凄く良くなっています」

 マスティカを付与している特殊な痛み止めだ。半日もすると嘘のように痛みが消えていた。

「今日の夜まで貼ってると良くなると思うわ。だから今日は無理しちゃ駄目よ?」
「……はい。……ぃひゃっ!?」

 突然声をあげるレミィ。
 ひやりと冷たさがレミィを襲っていた。

 ――この、シートを貼る瞬間はいつも苦手……。

 突然。
 がらりっ
 と、保健室の扉が開いた。

「レミィ、大丈夫か!?」

 その声はキアル。
 ――の方をぎょっと振り向くのはレミィ。
 
「……」
「……」

 二人共その場で固まっていた。
 あららぁ、とのほほんとした息のシェリル。右手を頬に当てているそれは間抜けな笑顔のようにも見えた。

「ご、ごめんっ!!」

 と先手を取ったのはキアル。

「きゃぁあああ」

 バンっ
 ガシャン!!



「さすがにさぁ、器具投げるもんじゃないと思うぞ」

 うふふふと間抜けな笑顔のシェリルから治療をされていたのはキアル。顔に大きな絆創膏を貼られていた。

「……いや、あの、ごめんね? でも、その……」
 
 赤い顔をしながらもじもじとしているレミィ。

「いや、悪かったって……。そんなつもりじゃなかったんだって」
「うん……」
「それは良いとして、怪我、大丈夫か? 昨日襲われたって聞いた」
「うん。ティナと先生のおかげで、怪我はもう殆ど治ったよ。あと一晩もすれば完治!」
「そっか。それなら良かった」
「心配してくれてありがとう」

 ニコリとキアルをみつめ笑うレミィ。
 それをみたキアルも、ふっと息をこぼし、ニコリと笑い返した。

「その、昨日のこと聞いていいか?」
「……うん」



 レミィは昨日の出来事をキアルに話した。
 キアルは始終レミィの言葉を相槌交えながら聞いていた。

「そうだったのか……。大変だったな。それにしてもそいつ、一体何者なんだ……」
「ノアが言うには、エルパローラの上級生らしいんだけど」

 ちらりと間仕切りの向こうにいるシェリルの様子を伺うレミィ。
 自分の仕事に熱心の様子だった。

「なんだそれ。上級生が生徒を襲ってるってことなのか?」

 少し声が大きくなるキアル。

「ちょっと聞こえちゃう」

 しーっと人差し指を立てるレミィ。

「ごめん」
「まだそうと決まったわけじゃないよ。わけじゃないけど……」
「どっちにしても、その襲ってきたやつ、まだ捕まってないんだろ? だとしたら、まだその辺ウロウロしてんのかな」

 怪訝そうな顔で言って言葉をつぐむキアル。
 それを聞いて少しうつむくレミィ。
 
 ――あの目……。あの時私を見ていたあの男の目。
 なんだろう、思い出しただけで心が閉まりそう……。
 あの時、あの目は私をしっかり捕まえていた。遠くからでもわかった。
 だから思う。あの男決してあのままでは終わらせはしないだろう。

「……かも、しれない」

 膝においていた手を強く握りしめる。

「だから、私がもっとしっかりしないと」

 スカートがクシャッとなっていた。

「レミィ」

 キアルの声が名前を呼ぶ。
 その声を聞いて、はっとするよう手の力を抜き、顔をあげたレミィ。

「あんま力むな? そんなガチガチになってると、体動かねぇぞ。ほら」

 そんなレミィの目の前で、両手をグッパーグッパーとしてみせる。

「大丈夫、何も心配ないって。俺もいるし、ティナもいるし。うるさいエルナだっているし」

 二カッと清々しい笑顔のキアル。

「……うん」
「あと、あれだ……あの男」

 きょとんとするレミィ。

「……もしかしてウィル?」
「ああ。しゃくだけど、相談、してみたらどうだ?」

 本当に乗り気でないオーラが伝わってくる。

「うん……でも、ウィルだって忙しいだろうし、こんな事には……」
 
 んふーっとため息をつくキアル。

「まぁ……。一応提案したから。あとは任せるけど」
「ありがとう。どうしたの? 少し前はあんな風に言ったくせに」

 ふふっとレミィ。

「……うるさい」

 いつもはあまり頼りにならなくて、今もこれと言って心配を拭える根拠もなかったキアルの励ましだったけど、どこかちょっと安心したレミィだった。

 ……そういえば最近ウィルを見てないような気がするな。


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